単行本のストックがほぼなくなってしまってここ1週間は困ったなと思いながら民俗学(ちょっと安め)を出している。生活系も文学もデザインも音楽も映画も文庫もない。大量の単行本の買取りが欲しい。絵本は面白いものが大量に入ってきている。古今東西色んなものが1930年代くらいからある。お売り頂いた人曰く、その本たちをあちらこちらから集めていた当時は「お給料の半分くらい使っていた」そう。新しいイラストやデザインをたくさん吸収したかったのだそうだ。

たくさんお売りいただくお客さんの本を見るのはとても面白い。一緒にいたことのない人と時間を共有したような錯覚を少し受けたり、この人はこの本を新刊で買った時こんなことを考えていたのだろうか、とつい考えてしまったりしている。本の読み方のクセもわかる。この時間は短いのだけれど、誰よりも近くお客さんのものの見方に寄り添っているような気持ちになることがある。あと面白いのは、本には栞代わりにいろんなものが挟まれること。メモやレシート、写真、手紙、チケット、押し花・・それも、本の持ち主らしさが出る。今まで一番びっくりした栞はカラスの羽だ。目に留まった瞬間、何かはわからなくても、何か生き物の関係するものだと瞬時に悟ってしまうようで、頁を開きちらりと見えた瞬間に恐ろしくって心臓がバクバクした。古本屋になってからページに折れ跡のある本も買うようになった。読むときに、折れた頁は何かの予告で、その頁に近づくほど「これからきっと何か起きるのだな」とドキドキする。そして、その頁にさしかかると、頁の角を折った主はきっとこの言葉に打たれたに違いないと予想してみたり、自分もおんなじだ!と驚いたりするのだ。

休みの日はホン・サンスの新作『自由が丘で』や『0.5ミリ』『おとぎ話みたい』を見た。寺尾紗穂さんのソノリウムでのワンマンライヴとポール・ニルセン・ラヴ(Ds)ケン・ヴァンダーマーク(Ts,Cl)のライヴも見た。思い返してみても、充実した体験。本は買っておいてからずっとほうておいたリチャード・パワーズの『幸福の遺伝子』をようやく読み始めた。あと西村佳哲さんの本を2冊読み返した。悩んだ時は、本を読んで考えてみる。