百年「と」写真 ~写真と芸術の界面から~

「写真は芸術か」という問いは、今までに幾度となく繰り返されてきた。その答えは、時代によって幾度となく変化してきた。「芸術写真」として写真は絵画を目指し、「思想のための挑発的資料」として写真は記録を目指し、またあるときは・・・。その歴史は、「写真は芸術か」、私たちにとって写真とは何かという問いを投げかけ続けている、写真と芸術の関係をめぐる写真家たちの葛藤と闘争の歴史でもある。しかし、メディアの多様性などから、写真と芸術の関係を探るだけでなく、写真そのものを問うことが一層困難になっている現在、写真はわたしたちに何を問い、私たちは写真から何を語ることができるのだろう。
 
日本近代写真史・戦後美術史の展示を精力的に企画担当し、『写真、「芸術」との界面に』の著者である光田由里さんをお招きして、写真家たちの軌跡を辿ることから写真を捉え直し、「いま」の写真のかたちを探りたい。写真史に生き生きとした闘争の軌跡を見た光田さんは、「いま」をどのように見ているのだろうか。
また、お相手にmatch & company主宰の町口覚さんをお招きする。現代の写真家の写真集のアートディレクションを多く務めるなかで、町口さんは昨年写真史に埋もれてしまった作家に光をあてたM/Lightレーベルを立ち上げた。なぜいま、町口さんは過去を振り返ったのだろう、そしてそこに何を見たのだろうか。
写真の豊かな歴史に対すると敬意と愛情を感じさせるお二人の対話から、これまでの写真とこれからの写真の両方の魅力をきっと感じることができるだろう。過去を振り返ることから、もう一度「いま」を見つめ直したいと思う。
 
 

光田由里(みつだ ゆり)
渋谷区立松濤美術館学芸員。専攻は近・現代美術史、写真史。担当展覧会に「Counter Photography」(2000年)、「瀧口修造の造形的実験」(2001年)、「大辻清司の写真 出会いとコラボレーション」(2003年)、「中西夏之新作展 絵画の鎖・光の森」(2008年)など。著書に「「美術批評」誌とその時代──現代美術と現代美術批評の成立」(『Xerox Art Bulletin II』、 2006年)、『野島康三写真集』(赤々舎、2009年)など。
 
町口覚(まちぐち さとし)
デザイン事務所マッチアンドカンパニー主宰。日本の写真界をリードする写真家たちの写真集を数多く手掛ける。05年、自身のデザイン事務所から写真集レーベル「M」を立ち上げ、発行・発売元となり、写真集販売Webサイト「bookshop M」を運営。09年には、「M/Light」レーベルを立ち上げ、自らの父親世代の未だ出版物になっていない名作にまさに光を当てる気持で写真集を刊行している。今年もパリフォトをはじめとする世界のアートフェアに参加する。
match and companyウェブサイト
bookshop Mウェブサイト

 
9月3日(金)19時30分~(19時入場開始)
チケット代:1000円
定員:55名
予約開始日:8月7日(土)11時~

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