今日はすっきりと晴れ、寒さもそれほど厳しくない。朝、高山なおみさんの『ごはん』(京阪エルマガジン社)のサイン入りを並べていたら小さい書房の安永さんが精算にいらっしゃった。風のような爽やかさと愛嬌のある笑顔が素敵だ。速足で来て、わからないことを一粒も残さないように質問をしてくれるところも気持ちがいい。11月いっぱいで百年を退職することを伝え、お礼を言う。百年最後の日はいつもとあまり変わらず、納品された本を受け取ったり、本を拭いたり、スリップを書いたり、本を並べたり、値付けをしたり、お客さんと話をしたり、PCの操作をしたりした。

入りたての頃、「古本屋について、作家や出版社にどう思われているのだろう。嫌われていたら、嫌だな。」とか考えながら毎朝掃除機をかけていた。けれど、ある日、文庫本を買ったお客さんに、「ここに自分の書いた本が(古本で)あるから、サインします。」と言われた。その人は自分が作家であることを誇示したいようには見えなかった。ただ、サインをしたらその本が売れやすくなるのではないか、と思ってそう言っているように見えた。その時私は、どんな時でも本を応援している人がいることを知った。ある日のお客さんは夜、閉店間際の10時すぎくらいに来て、弦楽器を手に(中国の楽器だそうだ)、「ここで1曲弾いていいですか?」と聞いてきた。当然ダメだろ、と思ったけど、1曲弾いてもらった。楽器の名前は教えてもらったけれどすぐに忘れた。何かの勧誘じゃなくてよかった、と心から思った。風が吹いたように気持ちのいい音だった。常連客のKさんはマリリン・モンローとローリング・ストーンズが好きで、日本の70年代の写真や映画のことをよく話して聞かせてくれるお客さんで、本をラーメン屋の割引券で買うと宣言したり、(もちろん売ってない)「百年なんだからつけるポイントは100個だろ?」とよく言ってきた。(もちろんポイントはつけてない)お客さん同士の喧嘩を仲裁したり、百年を出たところで手紙付きの千円札をもらったりした。だんだん書いていて、古本屋の思い出から遠ざかっていくような気持ちがする。仕事は、値付けをするのが好きだった。古本をまとめて売ってくれるお客さんに対しては、その本を値付けしている間、その人の一番近くにいるように錯覚することもあった。この時に、この人はこんなことに興味があって、こんなことが好きだったのではないかな、とか、よくそんなことを想像した。本の読み方にもその人が出ていた。よく晴れたら、こんないい天気の日には本を買う人はいないよなと言い、雨が降ったら、こんな雨の日はお客さんは来ないよねと言った。だから、今日みたいな、晴れて少し肌寒い日が一番本が売れるような気がして好きだ。

百年での4年半は色んなことがあったけれど、一日一日が面白くて、古本屋はいい仕事だった。本はたくさーんあって、知らないことはもっとずーーーーーーーっと沢山あることを知った。これからもっと勉強したい。

百年で一緒に働いた人にも感謝。チェルシーさんは自分には思いもつかないような切り口で物事を考えていて面白かった。人にも物にも優しくて、よく気がつく人だった。早水さんはスケボーで出社したり、キャップをかぶってきたり、オシャレで、試したり、提案することが上手だった。私とは全然違うタイプだけれど、一番近くで仕事をした。迷惑も沢山かけた。早水さんにいつも助けてもらっていた。樽本さんには4年半働かせてもらって、面倒を見てもらって、沢山勉強させてもらった。頑固で、そこがいい。それぞれ尊敬できる人たちと楽しい仕事ができてよかったです。お客さん、樽本さん、早水さん、チェルシーさん、かかわっていただいたみなさんに感謝します。

ひっそりと白オビ日記おわり