「窓」インタビュー

聞き手・構成:脇山妙子

「窓」・映画サロン「kiiiiino」について

―― まず、「窓」っていうのがどういうものか教えてください。

ショートリード●まず、「窓」の前に「kiiiiino(キノ)」があって。

―― そうなんですね。では、まず「kiiiiino」は?

有坂●プライベートでやっている映画のサロン「kiiiiino」で、そこで月に一度配布していたのが窓なんです。KinoIgluのイベントで奈那子ちゃん(小野さん)と最初に出会って。kiiiiinoというサロンは招待制というか、一般の人だけではなくて知り合いとか一緒にイベントをやった方にメールでご案内を送る。35人限定で月に1回やっています。みんなで映画見て、ご飯食べて、お酒飲んで、最後に笑いながらでも楽しめるような短編を色々上映して、お土産もらって帰るというイベントです。いただいたお金は経費で使い切って絶対利益を出さない。あくまで遊びとして。なので、利益の出ない分実験的なことをやれる場所としてやっている。僕たちだけじゃなくて、知り合った人が何かやりたいっていうのも基本的にウェルカム。ただし別にギャラも何も出ないので、それでもやってくれるなら是非やりましょうっていう。その中の一つとして奈那子ちゃんが「じゃあやります。」って言って「窓」がはじまった。

小野●「何かやらない?」って有坂さんに言ってもらって、最初一人でやるのかなって感じだったんですけど、一人でやるのがしっくりこなくて。それで思いついたというか、どうせやるならこの二人とやりたいと思って、始めたら案の定3人でやるのがすごく楽しくて。「窓」っていうのは、毎回1つ映画を上映してその映画のための文と写真とデザインっていうのがテーマで、映画を解説するのではなくて、私たちが映画を見てそれにそれぞれが感じたものをそれぞれの媒体で勝手に表現するっていうちょっとkiiiiinoでしかありえないというか、そういう自由に勝手にやっているっていうおみやげです。小さな冊子みたいな感じなんですけど、帰りの電車の中とか、家に帰ったときとかにそれを見て、映画のこともですけど、そのkiiiiino楽しかったなーってこれを見て思い出してくれたらいいかなーというような思いで始めました。「窓」のタイトルはあさこちゃん(しおいりさん)が。

しおいり●そう、つけたけど。今考えると後付けの意味かなと思うんですけど、すごく感覚的に作っているものなので、受け取り手によって違うからどう受け取ってもらうかも自由っていうのもあって、「新しい風が吹きますようにっていう意味」で「窓」がしっくりくるなって感じで。でも、タイトルをつけたとき、窓ってチーム名じゃなくて冊子の名前なんですけど、何にするか相談したときに漢字が良いよねって流れで・・・。

小野●えー、でも違うよ!

しおいり●えー?!

小野●「スクリーンが窓じゃない?」って言ってたよ。「めっちゃこれだよ!」ってめっちゃ言ってた。笑

ショートリード●言ってた。笑

小野●映画のスクリーンは四角いから、「窓」じゃない?いろんな景色が見られるしって。

一同●笑

「窓」のつくり方

―― 今どのくらいやってらっしゃるんですか?

小野●丸12ヶ月。でもなんかこのメンバーでしかありえないというか。本当に自由すぎる。

有坂●ありえないね。笑

しおいり●上映作品が決まったら、その映画を課題として有坂さんから教えてもらって、それを各自で見て、勝手に作ってジェシちゃん(ショートリードさん)にボンって。

小野●そう、丸投げ状態。笑

ショートリード●ボンってきて、わー!みたいな。歩み寄らなさ過ぎて、でもそれで面白いのが、続けていくと自然とつながっていくっていう。というか、歩み寄ってないのに何この歩み寄ってないのに歩み寄ってる感じ!って。そこがすごく面白くて、しっくりいった時に、ああ窓もここまで来たかと思いました。

有坂●あるとき、イベント当日にみんなが集まったら三人ともボーダーだった。そこまでいったっていう。笑

小野●有坂さんもボーダーなので、全員ボーダー。笑
感覚的には最初のやつは手探りだったけどそれ以降は、「窓」はそれぞれこうやって作るみたいなのがそれぞれあって。例えば、私だと映画を見てちょっとしたときに出てくる映像の残像を撮るみたいな。私は写真担当なんですけれど。あさちゃんは台詞とか。

しおいり●結構台詞とか、あとはその映画のキャッチコピーとかが気になります。調べて、そこから展開していく。

ショートリード●私は場面・場面を色とか形に落とし込むときに、映画に歩み寄るわけではないんですけど、どこかに共通するポイントというか、リンクするポイントがあったほうが個人的にしっくり落ちるというのもあって。見ながらちょっと頭を使いつつとか、あんまり頭使わないでとかそういう加減で見つつ・・・でもDVDのジャケットや見せ方は一応頭に置いておいて、それに出来るだけ歩みよらないようにというか、ちょっとこう自分のフィルターを通してのアウトプットが出来るようにしています。

―― kiiiiinoとしてはどういう意図でやっているのですか?

有坂●映画のセレクトはkiiiiinoって言うサロンをもう4年で50数回くらいやっているんですけれど、1年単位くらいでテーマを決めてセレクトしてます。ある年は音楽モノって言う縛りの中で日本のインディペンデントなものからヨーロッパ、アフリカなどもやったり。でも丁度彼女たちが参加してくれた時は「個人的に衝撃を受けた映画」っていうのだけあって、ジャンルは出来るだけバラバラでいきたいと思ってアメリカのコメディーをやったり、学園ものをやったり、ロシアの戦争ものとか、まあ色んなものを上映したんです。普段のKinoIgluだと、例えば救いのない映画っていうのはほとんど上映したことがなくて。KinoIgluで上映するときはいつも空間に合わせて映画をセレクトして、その場所に溶け合うような映画をやっているのですけど、そのサロンに関しては場所は代々木のDADA CAFEっていうので決まっているので、逆にテーマを決めてその中でどうせ僕のところに1円も入ってこないので開き直って、救いがなくても映画としてよかったら上映しようと。そこは、自分的にはすごく勇気のいることで、何回か迷って勇気をだしてやろうって選んだものを彼女たちなりに解釈して「窓」っていう小冊子にしてくれているんですけど、まあ解釈は、映画ってストーリーとか映像とかいろんな要素で成り立っているので、いろんな解釈があるのが面白いところなので、それを各々が自由に表現しているってところがたぶん面白いし、まとめちゃうと映画の可能性の一部しか表現できないと思うのでそういう意味ではすごく面白いことを始めたなっていう。