「窓」インタビュー

思い出に残る上映と窓

―― 一番印象に残っている上映ってそれぞれありますか?それとどういう窓を作ったかって言うのを一緒に伺いたいです。

小野●『ざくろの色』とか。『ざくろの色』はすごく面白くて、あさちゃんは赤をテーマに文を書いていて、なぜか私は白をテーマに撮っていて。全部白の写真。(お互いの担当部分の)発表をメールでするんですけど、色だけど全然違う!みたいな。

―― なんで白にしたんですか?

小野●残っていたのが、後から出てきたのが、白だったんですね。赤のイメージが強いんですけど、いざ撮るぞとなったときに残っているのがなぜか白だったんですよね。

しおいり●わたしも一番印象に残って、出来たものとしてすごく好きなのは『ざくろの色』。ジェシちゃんのデザイン、開けたときに糸が赤いインクで染まっているっていうのにハッとなって。あれはすごく衝撃だったけど、映画を見て自分で一番思い入れというか言葉にしたときに「ああ」となったのは『トト・ザ・ヒーロー』。姉弟愛なのか、何かすごく考えるところがあった。

―― ショートリードさんは何ですか?

ショートリード●一番目の『幸福』がきました。

小野●全部いいよね。

ショートリード●本当に全部いいの!一個ずつ思い出したらあー!ってなるよね。私あれも好きでした日本の『婚期』。

小野●私あれも好き『素敵な歌と舟はゆく』

しおいり・ショートリード●よかった!!

小野●あれ、映画よかったって話になってる。笑

有坂●よかったよかった、それは。笑

ショートリード●あ、でも『素敵な歌と舟はゆく』は自分の中で結構チャレンジしたものです。vol.7の壁に展示してあるものなんですけど、結構回数を重ねてきていたのもあって、パソコンで完結するものじゃなくて何か新しいことが出来ないかなと考えていて、一度やってみたかった版下という方法に挑戦してみました。厳密なやりかたではないんですが、素材を印刷してそれを台紙の上で構成していってパソコンの中ではなく、手作業で大きさや位置を見ながらつくっていったのでとても新鮮でした。絵をつくるときに、意識したことが出来るだけ一つ一つの言葉や写真が重ならないように構成していて、なんとなく無意識なんですけど。でもその後に有坂さんから、この映画はすごく交わらなくて、交差しているけれどそれぞれがよけているというか、交差しないようにしているって話を聞いた時に自分の中でハッとなって。頭で考えていないけれど、どこかでそういうのを感じているんだなと思って。それがすごく印象に残っています。

小野●それは、初めて聞いた。笑

しおいり●私、「窓」をやっていて面白いなと思うのが、他にもおみやげを作る人たちがいてそれが、本当にバラバラ。

―― じゃあ、「窓」以外にもおみやげを作ってる方がいらっしゃって、kiiiiinoに行くとそのおみやげをたくさんもらえると。

有坂●うん、そう。

小野・しおいり・ショートリード●もうすごいんですよ、結構盛りだくさんのおみやげがもらえる!

小野●冊子は私たちだけで、お菓子作っていたり、あとはサブロさんで今展示している「きのうと」っていう毎日映画について書いていたりとか、形はみんな違うんですけど。

しおいり●それがすごく面白いなと思って。その中にある「窓」とか。もらった人の受け取り方も全然違うだろうし。

ショートリード●渡すときにみんな並んでおみやげを配るコーナーっていうのがあって出入り口でやるんですけれど、みんな帰るから混雑するんですよ。その感じがすごくいいです。お菓子とかもまだかなって待っているみたいな。すごく毎回おいしそうだし。毎回贅沢です。

―― 有坂さんはそれを毎回やっているんですね。そのおみやげを作る方たちは毎回変えているんですか?

有坂●特にこっちから「やらない?」とか、「今回で終りね」とかじゃなくてみんなのタイミングがあるので。「窓」は12ヶ月続いていて、1年一区切りで「じゃあもうやめます」って言われて。僕は「折り入って話があるんですけど・・・」って言われたときにそんな気がして。終わってほしくはないと思ってでもまあいつか終わりはくるので覚悟を決めてたらやはりそうだったっていう。

―― えー、終わるなんて知らなかった。

小野●そうなんですよ。ちょうど12ヶ月っていうことで。

しおいり●12ヶ月のタイミングでそれぞれの活動が変化してきたというか。

―― 変化っていうとどういう感じになったってことでしょうか?

ショートリード●就職というか転職というか、私がちょっと大きく環境が変わるので今まで通りにできなくなったことが出てきたというのが大きくて。でも続けていきたいっていう気持ちがありつつで葛藤していて、どうしようって思って悩んでいたんですよ。自分の中でふつふつとしていて。でも話をしたりして、そういう気持ちのままやるのもどうかと思うから、1回お休みしてまた復活する機会があったら復活したいと思います。

「窓」を作った3人の出会い

―― 今更なのですが、この3人ってどうやって出会ったんですか?

小野●最初あさちゃんと私が同じギャラリーで、あさちゃんが前の日、私が次の日に展示していてその両方に来てくれた子が「hoho」※1のヘアメイク担当の子で、私たちを会わせたいと言ってくれてご飯会をして私たちはそこで出会いました。そのヘアメイクの子が「作品撮りしよう」と言ってジェシちゃんがモデルで来てそこで出会って・・・というふうにバラバラに出会ったんですけど、なんかみんなそれぞれ文章書いていたり、デザインやっていたり写真やっていたり、これは何かみんなで出来るんじゃないかっていう感じでみんなで集まるようになって作ったのが「hoho」なんですけど、それより前にも3人では色々活動していて。

―― 「hoho」じゃなくてこっちのイベントでは「窓」でやったわけですよね。それって何か区別がありますか?

小野●その「hoho」と「窓」の区別っていう話で、「hoho」はみんなのいつもの仕事の延長線上というか、ちゃんと仕事しているんですけど、「窓」はちょー遊びっていうか。遊びっていうとあれなんですけれど、楽しいものというか。発散みたいな感じのところがあるかもしれないです。

しおいり●それは大きいかも。

―― それは共通しますね、有坂さんの言う遊びと。

有坂●もともとそうですね、そこからあの場所が始まってそれでおみやげで参加しているので、やりたいっていってくれる人には出来るだけ普段やれるようなことじゃない、無茶してほしいんですねあの場を使って。集まっている人はお店やっていたりとか、表現者だったりとか面白い人が集まっているから。でも、知らない人なわけじゃないですか、その微妙な距離で実験なんて出来る場所なかなかないと思うので、振り切って何かやってくれたほうが僕らとしては嬉しいし、「こういうものやることにしました」って言われてもチェックとか絶対しないようにしていて。僕も普通にお金払ってイベントに参加しているので、だから純粋にお客さんとして驚きたい。

一同●えー!そうなんですかー?!

―― 遊びだからそんなに楽しいことが出来るんだと今お話を聞いて思いました。

しおいり●遊びだからこそジェシちゃんはこだわるところまでこだわるし絶対に手仕事を入れるとか。そういう要素が私は「窓」好きだな。

ショートリード●そうかも。それが普段だったら絶対出来ない。やっぱり印刷物って大量生産で、そういうことってどうしても500、1000ってなったら職人技じゃないとできないとか、ロボットじゃないとできないとかなってしまうけれど。限られた40、50の部数で印象与えたり、記憶に残してもらえるものを作ろうって思ったときに、自分がそういうのが好きっていうのもあって、変わってるものとか、えっていうちょっと変なものもやりたがるふしがありますね。

小野●結構kiiiiinoって素敵な感じの人が多いから、おみやげもナチュラルで可愛いって感じだけど、その中で「窓」はちょっと・・・。感想とかもらうと「奇妙」とか言われたりして。笑 でもそれぞれ普通にやっているのに合わさった時に奇妙になる。でも私はそういうところが結構好きで。へんてこになるっていうバランスも気に入っています。

有坂●へんてこだよね。イベントの最後におみやげの話をそれぞれからしてもらうんですよ。何人かいるので今回こういうおみやげを作りましたって言って。この3人は3人並んで「しおいりです。ショートリードです。奈那子です。」・・・ってもうアイドルか!みたいな。笑 だんだんアイドルを意識し始めてきたかのような。笑

小野●でも三人でいると意識しだすよね。写真とか、はいどうぞみたいな。笑

しおいり●三人集まってくださいとか言われるからちょっと可愛い子ぶったりとか。笑

ショートリード●そうそう、構えちゃうよね。笑

有坂●女の子女の子しているところもあるんですけど、すごく芯が強いというか。ストイック。それが作品にはたぶん表れていて、さっきしゃべっていたあのアイドルな感じとおみやげにすごいギャップがあると思う。きっとこういうすごく可愛い感じかなーと思っておみやげ開けたら、「あれ、なんだ?!」みたいな。

―― 中途半端にふわふわしてねえぞみたいな。

ショートリード●ふわふわ感はないかも。

小野●最初に第1号の「窓」を有坂さんに渡した後メールがすごく嬉しくて。覚えてる?なんかめっちゃ素晴らしいみたいな。嬉しかったです。

しおいり●けっこうkiiiiinoに来る人って毎回連続で来る人だけじゃなくてとびとびに来る人もたくさんいらっしゃる。だから続けて見る人もいるしその時だけもらう人もいる。それでなんか受け取る印象も違うなと思います。

―― 今度の百年でのイベントのおみやげはどういう感じになりそうですか?

しおいり●ブックケースを作ります。やっぱり百年でやらせてもらうので映画と窓っていうのが合わさって何か出来ないかなと考えたときにやっぱりブックケースがいいんじゃないかなと。そのブックケースの中に私たちが作った「窓」っていう小冊子と、せっかくだからななちゃんの撮ってくれた写真のしおり。あとちょっとその時のイベントのスペシャルなお菓子を入れようかと思います。シリアルナンバーを「1~100」までふってあって。

―― その心は?

小野●old/new※2・・・笑

―― ありがとうございます。笑。そういう感じになる予定ですね。

※1「窓」のメンバー+3名でやっているリトルプレス「“当たり前” に向きあって、問いかけて。真新しいものばかりではないけれど、新しいものを見つけたい 」がコンセプト

※2 百年は「old/new select book shop 百年」

(2013年8月31日 吉祥寺・スターバックスにて)

小野奈那子(おの・ななこ)

1987年神戸出身。フォトグラファー。雑誌、ファッションのカタログなどで活動中。個展、グループ展も多数。
http://www.ononanako.com/

しおいりあさこ

1984年新潟出身。作家。絵本創作専攻科を卒業。絵本や児童文学のほか詩や散文を制作。
http://shioiriasako.com/

ショートリード・ジェシカ

1987年滋賀出身。グラフィックデザイナー。2010年京都造形芸術大学 情報デザイン学科卒業。東京を拠点に現在修行中。

KinoIglu / キノ・イグルー
有坂塁(ありさか・るい)

2003年に中学校時代の同級生。有坂塁と渡辺順也によって設立された移動映画館。東京を拠点に全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映している。多彩なアーティストとのコラボレーションを始め、夏の野外上映会、クリスマスパーティー、SHOPのAnniversary Party、こどもえいがかい、全国ツアー。さらには映画祭のディレクションや、ライブラリー向けのDVDセレクトまで、既存の枠にとらわれることなく、自由な発想で映画の楽しさを伝えている。縁とつながりを大切に。
http://kinoiglu.cocolog-nifty.com/