ズレブレアレ

今日は一日休日らしい賑わい。とはいえ、本格的に冷え込んできたからか夜が更けてくるとひっそり。今日、はじめて吉祥寺駅前のイルミネーションを見た。どうやら1時間ごとに大音量でクリスマスソングを流している模様。あそこは毎年聞いたことないクリスマスソングを結構無粋な音量でしつこく流すので、毎年よくわからないクリスマスソングを覚えてしまうのだった。
 
昨日は久々に市場でスパークするも1つも落札できず、本格的にしょげた。封筒にぎっしり札が入っている品を前にして、「このなかで一番高く、かつ損をしない値」を書いたつもりが全然振るわず。こんなこすっからいことを考えているから欲しい本を落とせないんだろう。とりあえず多少高くてもまとめて大胆に買ってしまうこと、と店長にたしなめられる。値段を書くときのちりちりする気持ちと、ちりちりしたにも関わらず落札できなかったときのがっかり感は何度味わっても苦い。その後はお店に戻ってひたすら値つけ。桜井通開の「ショートカット」(これを松沢呉一のミニコミだと思い込んでいたのだけどリルマグの野中モモさんが桜井通開主催だと教えてくださった)や80~90年代の読み甲斐のある人文書などまとめて入荷。
 
まだ風邪をひきずっているのもあって、今週はほぼ外出せずにひたすら読書。佐々木中「くだかれた大地にひとつの場処を」、柏倉康夫「思い出しておくれ あの幸せだった日々を 評伝ジャック・プレヴェール」、安野光雅「絵のある自伝」、宮川淳「引用の織物」をぽつぽつ読む。佐々木中のアナレクタのシリーズは出るたびに買ってしまう。3巻も午前中に書店で購入して、その日いちにちを費やして読んだ。佐々木中の言葉にはいつも励まされる。プレヴェール評伝は600ページ以上におよぶ大作で、プレヴェールと同時代を生きたパリの傑物たちの姿が丁寧に拾い上げられている。淡々とした記述ながらもその情報量は驚くほどで、彼らの生きた時代がいまいきいきと蘇ってくるよう。かなり細部まで書き込まれているので意外な事実に驚かされたり、何よりもプレヴェールの生きることへの情熱とやさしさに胸を打たれた。安野光雅自伝は幼年期から画家になるまでの生涯を安野光雅独特のユーモアと、書き下ろしの絵とともに語ったもので、すらすらと読みながらもじんわりと心に残るものがあった。宮川淳の「引用の織物」は長きにわたり格闘している1冊で、私には難解な箇所が多くなかなか進まない。光田由里さんの高松二郎論を読んだ勢いで頑張って読んでいる。
 
来週も冷え込むのだろうか…寒いから出歩きたくなくて、本を読むか正月用に上等な日本酒を購入すべく研究するかで、なんだかまるで定年後のお父さんみたいな過ごし方をしている。一応クリスマスを意識してやたら長いロウソクを洒落た雑貨屋で購入したので、部屋の電気を消してロウソクをつけてみるもどうにも手持ち無沙汰で、とりあえずその光で読書したらなんだか今度は貧乏学生のような感じになって、なんだかもう打つ手なし。そもそもクリスマスを意識して長いロウソクを一本買うあたりがズレているのだった。