リーバイ・パタ(Levi Pata)さんインタビュー

―― サンフランシスコへ戻った時に自身のトライブである「ノムラカ族」に興味をもったのですか?
リーバイ●アメリカに帰ってからきちんと勉強したいという気持ちになりました。日本語という新しい言語を学ぶ経験もしたので、自分の種族の言語も守れるようにと思いました。
―― 居場所を変えると自身のルーツにも興味を持つようになるかもしれないですね。
リーバイ●そうですね、でもアメリカのモダンな生活よりも日本の文化に惹かれますね。逆にアメリカの方が外国のように思えます。
―― 自分の作品をルーツと合わせてみられることについてはどうですか?切り離せないとは思いますが。
リーバイ●先日のALでのライブペインティング※2は、どんぐりの唄を唄ったりもしましたが、絵を描く動機やインスピレーションは祖先であるインディアンから感じるけれど、それをモチーフとして描くわけではないです。
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―― 今日のイベント「似顔絵スケッチ」※1は対象となる人のどこを見て描いていたのですか?いわゆる写実的というより、特徴を捉えていた感じがしました。
リーバイ●緊張しているなとか、綺麗な目だなとか、一瞬で感じとり、その人のイメージをつかみます。
―― 似顔絵と自分の作品を描く時の大きな違いはなんですか?
リーバイ●似顔絵を描いている時はその人のことを想っているから、その人に喜んでもらえるように描きます。
―― 自分の絵を描く時はどのくらい時間がかかりますか?
リーバイ●僕は早いと30分程ですね。だんだんイメージ、かたちが出てきて、色を付けるとか、線を足すとか。

―― この作品集の表紙にもなっているネコというかキツネのようなキャラクターは?
リーバイ●これはネコと人間の間のようなものです。鼻もありますし。モチーフはネコです。タイトルにもなっている「小さい部屋」に2歳から飼っているネコがいつもいました。一人っ子なのでいつもそのネコしかいなくて、一番身近な存在でした。
―― 奈良さんでいう女の子みたいなものですか?アイコンのような。
リーバイ●そうですね。近いかもしれないです。
―― 今回の作品集をまとめようとしたきっかけは?
リーバイ●去年展覧会をしてから僕のことを伝えるための本を作りたいと思っていました。長い時間かけて描いた絵と、小さい頃からずっと描いているようなノートに描きためた絵と混ぜています。
―― 幼少期の写真も入っていますよね?日本の祭りのお面の写真もありました。あれはリーバイさんが撮影されたのですか?
リーバイ●はい、和歌山で初めて日本の祭りへ行ったときの写真です。とても面白くて印象に残っています。
―― 作品構成は自分で?
リーバイ●去年の展覧会が終わったあとにどうやって作るのがいいかを話し合って、二つの構成で作りたいという相談をしました。
―― それはどういう意図で?
リーバイ●自然と思い浮かびました。月と太陽の二部構成で、二つのもののコントラストがあると良いと思いました。二つは分かれているのではなく、「悲しいことがあるから嬉しいことがある」といったパートナーみたいな存在です。
―― 二部構成は対ではなくパートナーと仰っていましたが、作品集「小さい部屋から」も二部構成で、今回の展示※2も「faces, from a small room」と「voices, a small room」の二部構成でした。そこは関係していますか?
リーバイ●はい。本の発売と合わせての展示なので、関係しています。
―― その二つのもの、パートナー、繋がっている関係は2011年FOILでの展示「鳴り響く銃声とギリシャの音楽」※3とも繋がっていますね。
リーバイ●言われてみればそうですね。
―― それが日本の文化と祖先のルーツの関係性と繋がっているのですね。
リーバイ そうですね。ネイティブアメリカンのことは、ちゃんと伝えていかないと残っていかない、言わないと無くなっていってしまうと思ってます。過去から学ぶことは沢山あるはずなのに、目の前にあるラテンの文化だけで自分の国が出来ているっていうのは違うんじゃないかと。

―― 今後の予定は?
リーバイ●やりたいこととして、絵の具を買わず、自分の作った画材で絵を描きたいです。今日のイベントでもクルミの皮からできた絵具を使いました。日本のインディゴもとても目に優しいし、捨てても害はない。
以前、youtubeでカルフォルニア・インディアンのおばあちゃんが、どんぐりの種からスープを作る方法を紹介している1960年代の映画を観て、昔は捨てるものなんてなかったことに気が付きました。そういう、捨てても有害なものが出ないものを使いたいです。もう少し、ものを大事にしていきたいです。
―― ありがとうございました。

※1 リーバイ・パタ作品集「小さい部屋から」(HeHe)発売を記念し百年店内にて開催されたイベント「似顔絵スケッチ」。
ご予約いただいた方の似顔絵をその場で描いてもらう貴重なイベントとなった。
※2 AL(恵比寿)にて2015年5月に開催された展示「faces, from a small room」。期間中にはライブペインティングも行われた。
※3 FOIL(東京)にて2011年2月に開催された展示「鳴り響く銃声とギリシャの音楽」

◎書籍「Levi Pata:from a small room リーバイ・パタ:小さい部屋から」(HeHe)は
こちらの百年ネットショップからもご購入いただけます。(※全てサイン入)
http://100hyakunen.thebase.in/items/1719753

(2015年5月24日 吉祥寺・百年にて)

プロフィール

リーバイ・パタ(Levi Pata)
1985年、ホリスター(カリフォルニア、アメリカ)生まれ。
2004年、カリフォルニア・パラダイスからサンフランシスコへ移住。
2008年、City College of San Francisco卒業。2009年春から2011年夏まで、東京を拠点に活動。現在、サンフランシスコに戻り、制作活動をおこなっている。個展に、2011年「鳴り響く銃声とギリシャの音楽」(FOIL GALLERY、東京)、2012年「IT HURTS TO LET YOU GO」(Kokoro Studio、サンフランシスコ)、2014年「MOON SON」(AL、東京)
http://www.levipata.com//