WOMB連続個展

会期:2015年3月21日(土)〜4月26日(日)
時間:平日12:00-23:00 土曜11:00-23:00 /日曜-22:00 火曜定休
会場:吉祥寺・百年 (武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2F)

1.菅野幸恵『それから、』  3月21日(土)〜3月27日(金)
2.川崎璃乃『新宿夜顔人』  3月28日(土)〜4月3日(金)
3.布川淳子『サンクチュアリ』  4月4日(土)〜4月10日(金)
4.田口ひさよ『あかい かさをもった こども』 4月11日(土)〜4月17日(金)
5.植田真紗美『海へ』 4月18日(土)〜4月26日(日)

◆4月4日(土)はイベントのため19:00まで

【トークイベント】
4月19日(日)13:00~14:30 光田ゆり×WOMB
チケット代:500円 ※予約制 定員50名
本誌にて「月をみる 光をよむ」を連載中の美術評論家・DIC 川村記念美術館学芸部の光田ゆりさんをお招きして、WOMBメンバーとトークイベントを開催します。
【予約受付】
3月28日(土)11:00~店頭・メール(HP右上の「お問い合わせ」もしくはmail@100hyakunen.com)、電話(0422-27-6885)にて受付開始。予約の際はお名前と参加人数をお知らせください。

WOMB

WOMBとは植田真紗美、川崎璃乃、菅野幸恵、田口ひさよ、布川淳子、5人の写真家による季刊写真誌として創刊しました。ここから生まれることや成長するしていくこと、そして最後には外へ向かっていく覚悟を表しています。本誌は毎号メンバーの一人が特集を担当し、作品をより深く読んでいくただくためにインタビューも掲載されます。「WOMB」では季節ごとに作品を発表していくとともに、ウェブやギャラリーでの展示も積極的に行っていきます。私たちは見えている事象よりもその先にあるものや見えない感覚を重視しています。
そして何よりも代わりのない身体性を信じています。
http://womb-magazine.com/WOMBmagazine/magazine/

光田ゆり(みつだ ゆり)

西宮市生まれ。専門は近現代美術史および写真史。著書に『高松次郎 言葉ともの―日本の現代美術1961−72』(水声社)、『写真、芸術との界面に 写真史 一九一〇年代―七〇年代』(青弓社)ほか

菅野幸恵『それから、』
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逢ったときのよろこびの為に、別れがあるという人がいる。人生にはつらく悲しい別れが溢れていて、その中のいくつかには再びがない。
唐突にやってくる別れに心が乱され、治まるまでに想像することができないほどの時間を要することもある。暗闇の中をひとりで歩き続けるような日々だった。それから経過した4年の歳月が、別れというものをやっと受け入れることができそうな心持ちにしてくれた。長いような短い月日が、生傷をかさぶたにまで変えた。そこにかさぶたがある、ということに向き合うことができるようになった。それが今できる精一杯だ。傷跡すらわからなくなるまでに、あとどれ程の時間が必要になるのだろうか。

川崎璃乃『新宿夜顔人』
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こんなにも知らない人に声をかけることは今までになかった。新宿の夜という雑踏の場所を選ぶ理由は、人混みが苦手で知らない人と話すことが得意でない私にある。
「なぜ未だに慣れないのだ」と、自分に苛立ちブツブツ言いながら歩く。心の奥にある臆病さとひたすら向き合って戦う。
いざ声をかけ撮り始めると、雑踏は横目にも入らず夢中になっている自分がいる。視界には相手しか入らず、そこが新宿だということすらどうでもよくなる。そんな時間が楽しく、なにより出会った人々の写真が愛おしい。
心の中にくすぶっている何かを取っ払おうと発奮したとき、自分の中に新しいエネルギーが生まれるのだ。

布川淳子『サンクチュアリ』
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人ごみの中で、ふと違和感を覚える。この中に知り合いがいるような、あの人のことを知っているような…、そんな誰かに出会うのだ。しかしそれだけでは話しかけることも触れることも許されない。触れたとしても何も伝わってこない無感情な肌に気持ち悪ささえ覚える。
なぜ人々はこんなにも近く触れられる距離にいて、誰の存在も気にせずに視界にも入れずにいられるのだろうか。
これらの出来事は私に線を感じさせる。すべてのものがあちらとこちらに分けられてしまって窮屈そうだ。まるで自分の所有物のように、土地、空気を分断するこの線の行方を探して、街の中を彷徨い続けるのだ。

田口ひさよ『あかい かさをもった こども』
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ある人は私の写真を見て言った。「自分だけが可哀想だと思っているのか」。
昔のことはとろとろと白い夢のようで、もう実感がない。それよりも刻一刻と過去の感触を失ってしまうのが悲しくて仕方がないのだ。
日常とは不思議なもので、現在見つめているものの中に過去があぶり出されることがある。私はそれを自分のものにしたくて、写真にする。いつか見た風景。いつかの自分が目の前に現れたとき、今現在もこの体の皮膚が裂けて赤い血が吹き出し続けていることを知る。もしかしたら女は血を写真にしているのかもしれないと思うことさえある。傷ついた少女達の肖像は私自身だ。赤やピンクを見つめたときに思うことは禍々しい憎しみの記憶でしかない。

植田真紗美『海へ』
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海へいく
岩も草も鳥も雨も人も
波の音の中で
じっと向き合えば
ひとつひとつ輪郭は違うけれど
同じ器のようだ
あの暗くて大きな海を蓄えている

どうしてか潮の香りのほうへ向かってしまう。うねる海面が抱える太陽と夜の縁を目でたどる。轟々とした風と波の響きが耳いっぱいに広がっていく。遠かった風景たちがだんだんとわたしを飲み込んでいくようだ。心地よくも恐ろしくもあるから、わたしの中へもうひとつの体が欲しくなる。現れてきては持て余してしまうものを、今は写真に収めておければと思う。

WOMB Vol.6 4月20日(月)発売予定