本「と」本を読む人vol.2

つまりはポートレートなんだよ、と樽本さん。
 
本を読む人、今回は音を紡ぐ人、よだまりえと言葉の話。
 

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去年、

HEADZから1stアルバム「それぞれのてんについて」をリリースしたばかりだ。

 

私がお手伝いする音楽のイベント*1で北海道の講演に出演してもらった。

女部屋は布団みっつ、川の字になって寝た。

次の日の朝、ピアノを弾きはじめた

光の差し込む部屋でねぼけた頭で

よだちゃんの透き通った声を聞いていていた。

 

今は美大学生と、純喫茶とレコード屋をかけもちしつつ、音楽を作っている。

 

よだちゃんの言葉どこからやってくるのだろう。

探るべく、ライブや、最近はよく行くのは散歩と図書館に一緒にでかけた。

 

―― 言葉はどこからやってくるのかなと

 

音楽を聴いていてその歌詞が中に入ってきて、出てくる。
歌詞を読むのも好きで、

好きな曲の、好きな歌詞のある曲のなんとなく聴いてた部分の

単語が自分の歌詞にもでてきたりとか、

あまり意識していないところであったりして

たとえば、さっき気がついたんですけど、
アナログフィッシュの夕暮れの歌詞が好きで、
「踏切でボーッとして立ってたらカマイタチに滑り込まれてしまったので」

ていう歌詞があって、よく一番最初に書く歌詞でカマイタチって単語がよく出てくる。


それで、別にカマイタチは馴染みのある単語でもないのによくでてくるから、

ああ、これか、と思ったり。

―― 好きなものが自分の底に沈殿させていったものがふと浮上してくるっていう感覚?

そんなのが多い。
後は本を読んでいて、いい文章だなと思ったものは書いていて…

(カバンの中から出てきたクロッキーやノート。手に収まるくらいの

大きさのノートに細かい文字でキチンと文字が並んでいた。日付と日記とともに)

 

2

 

あ、これは佐々木()さんのやつだ。

これは予備校の時のやつで…新聞でもなんでも書き出してる。


その時の思ったことなども書き綴ってある。
「代々木の踏切の音が、変」

こういうのがそのまま自分の歌詞になってる、とは思わないんですけど、でも、

なんていうか、この文章を読み返して

作るものの種にしていることは結構あります。

大事です。これは。

3

 

(メモの中には夏目漱石の虞美人草からの抜粋が一番多かった。

描写が澄んでいて好きなのだという。)

 

―― 詩の脇に絵や図が書いてあったりするけれど、こうやって曲をつくるの?

これは最近、バスクのスポーツ*2と作って、うちがピアノと歌を作って、送って、バスクが編曲してみんなで合わせたもので。

一貫してイメージがある時には、図を書いてみて、

こういうことを言うには、どういう言葉がいいのかって探してみる。

バスクはプログレっぽいバンドなのでぜんぜん違ったのになるから、面白い。

曲を作るときはピアノ弾きながら、音を考えていく。

言葉があったほうが歌いやすいから、

その時は全然意識していないんですよ、どういうことを言おうとか、
音の部分で面白かったり、意識していない部分は残しつつ、

一回しっかり考えて、

それである一部分だけを残して後で書きかえたりする。

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―― 最初に無意識に書き始めるけど、その後に選ぶ言葉で気をつけていることは?

 

自分が発してみて、こっぱずかしくないものにしようと。後々困るから。

歌うのが恥ずかしい言葉って単純に身の丈に合っていない気がする。

その言葉が自分のものになっていない。

そもそも言葉って言うものが誰のものかよくわからなくて、

それは歌詞書いている時によく思うことがあって。

 

言っていることが自分の言葉じゃないって感じるこっとていっぱいある。

日常会話でも

「元気?」って聞かれたら、別に元気じゃないけど「元気」って答えちゃうし、

そういう定型文みたいのができちゃってる気がして、

言葉って皆、共通のものであって、皆それを借りて話をしていて、

すべてを言葉で説明するっていうのは難しいし、

所詮借り物なのだなって思うことはいっぱいあるのだけれど、

でもやっぱり言葉の使い方が独特だったり、

なんか自分のものにしてるなあって人はたくさんいて、

そういうの聞くと、すごいなーーって思っちゃう。

―― すごいなって思う人は、たとえば?

マヒトゥザピーポーとか。

色々包み隠しているんだけど、自分にとって痛い事とか、

嫌なこととかを……凄い色んな言葉を使って、

普段、ぱっとでてこないような言葉とかを使って文章をつくる。

強がってるんだけど、けど、

本当はすごく素直で繊細でというのがわかる、という歌詞。

ライブを見ても、ブログを読んでも、歌を聞いても

奇跡的なバランスで今ができてる気がする。

下山(マヒトゥザピーポーのバンド)もソロも。

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―― どこでよむことが多い?

電車の中と家と。

 

―― どんのものを読むか教えて下さい。

中学生高校生の時は、小説ばかり読んでいて、

梨木香歩「家守綺譚」

ジョアン・ハリス「ショコラ」

三浦綾子「塩狩峠」

江國香織「流しの下の骨」

とか。

大学に入ってからは小説よりも、専門書じゃなくて、

なにかについての歴史…トイレ考現学とか他には

音楽の本をよく読むようになった。

あと、CDの歌詞、ライナーノーツまで全部。

 

―― 最近読んだのは?

保坂和志「プレーンソング」

これは友達がくれた。日芸の文芸の人に、いらない本あったらくださいと言ったら、

「よだにぴったりなのあるから」といって、くれた本。

昔バイトしていた事のある中村橋、近所に出て来る場所も覚えがあって、

猫の話そして音楽の話。

 

キーワードが自分に近くて、わかってるな…と。

―― そうやって本をすすめてもらうのは多い?

うん、自分から聞く。

今はいろんな人に本を貸してもらう事が多くて、

バイト先のお客さんと話をしていてかしてもらったりとか。

それは、動物の行動についての本。

最近はほとんどが人からお勧めされたり、貸してもらうもので、

それ以外に本読みたい時は図書館に行くのですけど、

ここ何年間は音楽についてが多いです。

特にポピュラー音楽について。

大友克英さんの「MUSICS」とか。

たくさんあるからなによんでいいかわからなくて、

佐々木敦さんとか知っている人の名前を見つけたら読みます。

知らない人の名前がたくさんでてくるから、読みながら、調べて、

聞きながら、読んで。

面白い人たちをみつけたときは本当に楽しかった。

 

「Caroliner Rainbow」

アメリカでは一部には有名だっけど、知っている人は少なかったという…

本読んでいて、これが知れたのが一番嬉しかった。衝撃と嬉しさと。

―― 音楽聴きながら本は読める?

音楽の本を読んでいる時は無理。歌詞がなくてもなんでも。

自分で聴きたい音楽は気を取られるので歌詞があってもなくても苦手です。

何もしないで聴くのが一番好きな聴き方。

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図書館にて…

詩を最近読もうと思うんです。

谷川俊太郎ぽさを感じると言われたものの、あまり読んだ事がなくて。

なにがよいですかね?

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しばらく本探しが続く。

私はトイレ考現学を読んでいたというから、

妹尾河童の「河童の見たシリーズ」を家から持ってきていて、

よだちゃんは歌詞が好きで読み返すという、CDをもってきてくれた。好きな歌詞の曲もひとつひとつ教えてくれたのでここに書き記しておこうと思う。

◯アナログフィッシュ「夕暮」

◯ムーンライダーズ「犬の帰宅」

◯はっぴいえんど「無風状態」

◯大貫妙子「都会」「くすりをたくさん」

◯矢野顕子「へびの泣く女」

◯マヒトゥ・ザ・ピーポー「甲羅のないカメ」「8月のメフィストと」

◯くるり「ハローグッバイ」「虹」「pray」

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よだちゃんが隣で歩く時、ふと出てきた鼻歌が消えてしまわないようにそろり、歩く。

ふくらんでいる音を壊さないように抜き足差し足。

吸収した透明な食べ物が、よだちゃんの体内にしみこんで、

いつかまた歌になって、でてくるのを心待ちにしている。

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*1 アリオト:http://alioth.celescape.org/

*2バスクのスポーツHP http://vasque.xxxxxxxx.jp/
よだまりえ×バスクのスポーツ https://www.youtube.com/watch?v=tgGRp1IANz0

文・写真 チェルシー舞花
ブログ
http://chelsea.jugem.ne.jp/

エトレンヌ
http://www.etrenne.com/model/chelsea.html/