展示「リビング」ナガタニサキさんインタビュー

―― そこから数をこなして今の感じに?常に描いてますか?

ナガタニ●常にではないですけど、テレビを観ているときは手を動かしてますね。

―― 一番心に残っているコンペはありますか?

ナガタニ●やっぱり1_WALL※6ですね。見てもらいたい方が審査員にいらっしゃったので。

―― 誰に見てもらいたかったんですか?

ナガタニ●菊地敦己さん※7です。1_WALLは必ず出さないといけないと思って。でも卒制と引越しがあり、引越し作業をしながら描いてました。笑

―― 1_WALLのデザイン部門で応募されてましたけど「デザイン」ということを意識しました?

ナガタニ●いや、特に考えず過去の作品を見てあまり構えなくていいのかなと。

―― いつも描いてる絵のコンセプトとかはありますか?

ナガタニ●可愛い!っていう衝動で描くというのはあります。自分が良いと思うものを描いています。アクリルで描くときとドローイングで描くときで描く感じが違うんですけど、アクリルで描くときは面というか、かたちを大事にしていて、ドローイングは勢いを大事にしています。

―― 1_WALLは面で無駄な線も省いてシンプルな曲線でしたね。

ナガタニ●それは意識してやっていて。最初、髪にも線があったんですけど消してシンプルにして、自分が好きなアレックス・カッツやエリザベス・ペイトンも複雑ではないので意識して描きました。

―― 1_WALLではどんなコメントをいただきましたか?

ナガタニ●長崎訓子さん※8が「いま女の子が女の子を描くということをもう少し意識した方がいい」とおっしゃっていて、先輩としてこれから先のことを考えた方がいいと。まだ答えを見つけられてないんですけど…、ただ可愛い子を描くだけだと…そういう子は沢山いるので。

―― 色はいつも決まっているんですか?

ナガタニ●大体決まってますね。混色はあまりしないです。1_WALLの時はパステルカラーを好んで使っていて、「love」と「hate」というタイトルで二枚描きました。この言葉は対義語だけどそこに大きな差はないんじゃないかと思い、色合いもあまり変えず「hate」も明るい色で、自分が描きたいように描きました。

1_WALL

―― いつもinstagramで上げているような、映画や雑誌で見た「可愛い」をそのときの勢いで描くのはコンセプトもないと思うんですけど、1_WALLでコンセプトを決めて描くのは時間がかかりました?コンセプトは日ごろから考えていたのですか?

ナガタニ●日ごろからではないです。「love」の筆記体のリズムが好きで「love」を使いたいと思い、明確な絵を描きたくて正方形で対義になるような絵を描きたいと考えていたので「love」と「hate」なんですけど途中で分からなくなってバーンと破裂しましたね。笑 そこが弱さなのかなと。

―― コンセプトも重要視されてたんですか?

ナガタニ●特典が1年後の個展だったので、それを見たいと思わせるような何かが必要だったんでしょうね。絵は良いけど、言葉が弱いという意見がありました。

―― 最近よく思うんですけど、作家やデザイナーの方々のプレゼンって本当に上手いですよね。大学卒業後も引き続き絵を描いてるんですか?

ナガタニ●そうですね、最近はアクリルよりドローイングを貯めてますね。働きつつ、気持ちは絵を優先してます。いままで依頼を受けてそのイメージに合った絵を描くということをしたことがなくて。長崎さんに言われたことも自分なりに考えて、私は気になったものをドローイングしていても人物が先にきて、癖で人を描いちゃってそれがワンパターンになってきていて。でもイラストレーターになりたいかと言われたらそうでもなくて。

―― 難しいですね。ナガタニさんの独自の世界観、画風があるから依頼を受けて描くと世界観みたいなものが崩れそう…。

ナガタニ●そうですね…難しいです。笑 昔は雑誌に使ってもらいたいという気持ちがあったんですけど今はよく分からなくて、今回の「ニクキュー※9」は指定もなく、普段通りに描かせてもらいました。

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―― アクリルで描くときとドローイングで描くとき、タッチはどちらが好きとかありますか?

ナガタニ●どうだろう…使っている脳が違う感じがします。でも完成が見えやすいアクリルかもしれないです。

―― アクリルだと好きな映画を観ながら描くことはできないですよね。

ナガタニ●アクリルで描くときは集中してますね。人がいると描けないので学校ではほとんど描かず、家で描いてました。

―― 今回の展示タイトル「リビング」って凄く良いですね。この展示のコンセプトは?

ナガタニ●いままで一人で展示することがなかったので、まずタイトルをすごく悩んでいて…。フレッシュな感じの爽やかなイメージが良くて、家にお姉ちゃんがいたのでいくつか適当に挙げてもらい、その中に「リビング」がありました。英語の意味を調べると部屋のリビングももちろんあるんですけど、「活発な、生き生きとした」という意味もあり裏テーマとして良いなと。展示タイトルを横文字のカタカナで探していたのでちょうどはまりました。

―― 候補ではどんなものがあったんですか?

ナガタニ●ミルクレープ、フレッシュ、ミックスジュース、ブーケ…でもしっくりこなかったですね。笑 タイトルは複雑なものより言葉にリズムがあるものが良くて。

―― 今までで影響を受けたコメントや意見はありますか?

ナガタニ●やっぱり1_WALLでの長崎さんですね。ファッション以外のことも考えながら描いた方が良いというコメントをいただいて、自分でも気付きつつも広げようとせず今に至ってしまっていたので。

―― 難しいですね。ずっと極めてきたからこそ今に至るわけですもんね。

ナガタニ●そうなんですよ。幅を広げた先に自分らしさがあるのかどうか…。

―― 今回の百年での展示も良い経験になると良いですね。

ナガタニ●はい、いろんな人に見てもらいたいです。

―― ありがとうございました。

※1種村有菜 漫画家でジャンルは少女マンガ。代表作「神風怪盗ジャンヌ」

※2アレックス・カッツ アメリカ出身のアーティスト。絵、彫刻、版画が有名。

※3エリザベス・ペイトン アメリカ出身の画家。油絵で知人や自分のポートレートを描く。

※4チョイス 雑誌「イラストレーション(玄光社)」で毎号実施される誌上コンペティション。プロのイラストレーターの登竜門とされている。

※5中村祐介 イラストレーター、ミュージシャン、漫画家。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットやアニメ「四畳神話大系」を手掛ける。

※61_WALL ガーティアン・ガーデン(ギャラリー)での個展開催の権利をかけた写真、グラフィックの二部門からなる公募展。

※7菊地敦己 グラフィックデザイナー、アートディレクター、東北芸術工科大学客員教授。

※8長崎訓子 イラストレーター。「チーズはどこへ消えた?(扶桑社)」「金持ち父さん貧乏父さん(筑摩書房)」などの書籍の挿絵も手掛ける。

※9ニクキュー ファッションブランド「サリー・スコット」のシーズンイメージビジュアルとなるカタログ。デザインはアートディレクター菊地敦己さんによるもの。

(2014年月8月21日 吉祥寺・百年にて)

ナガタニサキProfile

1991年 広島生まれ
武蔵野美術大学油絵学科卒業
2014年 1_WALL ファイナリスト
2014年 第190回ザ・チョイス 江口寿史さん審査 入選
2013年 リキテックスアートプライズ 入選
2013年 ペーターズギャラリーコンペ 宮古美智代さん
・白根ゆたんぽさん 最終選考
2013年 第186回ザ・チョイス 本秀康さん審査 最終選考
グループ展
2014年 「1_WALL ファイナリスト展」 @ガーディアンガーデン
2014年 「チョイス入賞作品展」 @六次元
2013年 「リキテックスアートプライズ」 @3331
2013年 「駆け出しタイアップ」 @浅草天才算数塾
2013年 「ポートフォリオを観て話す会と展示vol.1」 @新宿眼科画廊
2012年 「アートライン柏」 @そごう柏店
2012年 「MMK」 @下北アートスペース
2012年 「SUPERBODY」 @日暮里HIGURE
2012年 「ペリメリ」 @ターナーギャラリー
2011年 「星旄電戟」 @代官山UPSTAIRS GALLERY
2011年 「ぬるぬるチャージ」 @高円寺ギャラリー
ナガタニサキHP http://ngsk.mods.jp/