ここのところずっとバタバタしていて気が付いたら「敷島。本の森:ブックマルシェ」と「ラスト・バウス古本市」への参加が終わった。どこかに店の本の一部を移動させて売るというのはとても難しくて反省することばかり。スペースも、何が売れるかも全然違って今思い出しても胸がじりじり痛い。通常営業の雰囲気がやっと戻ってきたが買取りが(有り難いことに)このところずっと多い。

5月31日(土)から2つのイベントの予約が開始。1つ目は喜多村みかさんの写真展「DEEP POOL GUIDE」に合わせて行われるトーク+ライブイベント。ゲストとしてヴァイオリンニストの勝井祐二さんをお迎えする。トークもライヴもなんて豪華。喜多村みかさんの写真集『Einmal ist keinmal』(therme books)は個人的にとても好きな1冊。ひとつひとつの写真が作為をもって並べられるのが写真集の編集なのだと思っていたのだけれど、この写真集は並べた意図がこちらにはよく伝わってこない。意図とか意味とかわからないけれど1枚1枚が確かに自分を惹きつけ、時に惹きつけなくていい。とても抽象的だけれど、写真を信じている人の写真だと思う。だから見ているこちらも自分も信じてしまう。新しい写真展のDMを見たらそれは写真集に載っていた写真とはかなり違うような印象をうけた。とにかく写真展が楽しみだ。

2つ目のイベントは中国の現代作家残雪をめぐるトークイベント。訳者で研究者の近藤直子さんとミュージシャンの寺尾紗穂さんをお迎えする。いま、今年出た残雪の新刊『最後の恋人』を読んでいてやっと後半。しっかり物語を辿ろうと決意して文字を追っていくとその読み終えた世界はすぐにガラガラと崩され、どこに足を置いて進んでいいのやら不安な足取りで進んで行くことになる。はじめのうちは足を置くべき位置を考えながら読み進めていたけれど、今は開き直ってぐらぐらとした世界の様子に身を任せ、記憶するでもなく、進むこと自体を楽しんで読んでいる。本当に変な感じ。残雪『最後の恋人』は訳者を持って「今地上で最も怪しい本」と言わしめる1冊だ。寺尾紗穂さんは作詞作曲を自身で行うミュージシャンで文学作品を題材とした曲から、土方、交通事故、骨壷の歌まで独特の距離感とユーモアで作って歌っている。矛盾や不謹慎だとかそういうものを恐れることなく入れ込んで歌い上げてしまう寺尾さんに『最後の恋人』を投げてみること、訳者で研究者の近藤直子さんに残雪作品と今について伺うこと、それが奇妙で楽しい時間になるといい。